就業規則は個別の労働契約より優先される

前回は、就業規則も労働契約書もどちらも会社と従業員との契約内容を定めたものであり、前者は全従業員を対象とした統一的な契約内容であるのに対し、後者は個々の従業員との間の個別の契約内容である点に役割の違いがあると説明しました。(詳しくはこちら

では、就業規則と労働契約書に書いてある内容に違いがある場合はどちらが優先されるのか?
結論から先に言えば、就業規則が優先されます。

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。 この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準による。(労働契約法第12条)

しかし、一般的には「契約の締結は契約書によって行われる」という認識がありますから、労働契約についても労働契約書を締結しておけばそれで大丈夫という考えが会社側にも労働者側にも根付いてしまっているようです。

そのために、労働契約書の内容と就業規則の内容に乖離が起きているケースというのは実は少なくないのです。
例えば次のようなケース。

  • 労働契約書には「退職金なし」とあるが、就業規則には「すべての従業員に退職金あり」とある。
  • 労働契約書には「休日は週1日」とあるが、就業規則には「週休2日制」とある。
  • 労働契約書には「基本給のみ」とあるが、就業規則には「すべての従業員に住宅手当を支給」とある。

上記はいずれも、労働契約書に書いてあるその部分が無効となって就業規則に書いてある内容が契約内容として適用されることになります。
なので、退職金を支給しなければならないし、週休2日にしなければならないし、住宅手当も支給しなければならないのです。

また、これはあくまでも「労働契約書の労働条件が就業規則で定める基準に達しない場合に就業規則が優先される」というものであって、逆に「労働契約書の労働条件が就業規則で定める基準を上回る場合は労働契約書が優先される」ことになります。
よって、例えば次のようなケースは労働契約書が優先されることになります。

  • 就業規則には「パート従業員は退職金なし」とあるが、パート従業員の労働契約書には「退職金あり」とある。
  • 就業規則には「休日は週1日」とあるが、労働契約書には「週休2日制」とある。
  • 就業規則には「基本給のみ」とあるが、労働契約書には「住宅手当を支給」とある。

先述のとおり、ビジネス上の慣習からも「契約書」を重視する企業は多いのですが、まさかその契約書よりも就業規則が優先するとは思いもよらなかったと驚かれる経営者は非常に多いものです。
完璧な労働契約書を作成したつもりになっていても、就業規則の整備が追い付いていなければ、その労働契約書はそれこそ紙切れに過ぎないものになってしまいますよ。

 

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