労働契約書があれば就業規則は要らない?

就業規則は、合理的な労働条件が定められており、労働者に周知させていた場合には労働契約の内容となります。(労働契約法第7条)
これは、ものすごく簡単に言うと「あなたとの労働契約の内容については就業規則を見てくださいね。そこに書いてある通りですから」ということであると前回説明しました。

とすると、こんな疑問が浮かんできませんか?
「・・・てことは、就業規則さえあれば労働契約書はいらないのでは?」

実は、労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立します。(労働契約法第6条)。
つまり、労働契約は書面(契約書)なんか無くたって口頭でも成立するのです。

ただ、口頭だけだと、どうしても「言った、言わない」の問題になりがちです。
それに、特に中小企業では「じゃあ、さっそく明日から来てもらおう」「はい、わかりました」なんて感じで、賃金や労働時間や休日などの詳細を事前に決めずに働き始めるケースも少なくありません。
で、結局はあとから「話が違う!」と揉めることに。

こういったことを防ぐために、法律は使用者が労働者を採用するときは、賃金、労働時間その他の労働条件を書面で明示しなければならないと定めているのです。(労働基準法第15条)

これには具体的には労働条件通知書が使われます。
法律上は、書面による明示が求められているだけなので、労働条件通知書があれば労働契約書が無くても問題ありません。
でも、これだけだとやっぱり「言った、言わない」のリスクは残ります。
なぜなら通知書は、会社が一方的に契約内容を通知するものであって、少なくともその書面上には合意の痕跡が残らないからです。
なので、できれば契約書という形で労使双方が捺印し、合意の証として残しておいた方がいいでしょう。

さて、先ほどの疑問に話を戻しましょう。
法令で義務付けられている労働条件通知。一方で、就業規則の作成も法令で義務付けられています。
そして、このどちらにも、契約内容が明記されているわけです。
なぜわざわざ契約内容を定めた文書を2つも作ることを法律は義務付けているのか?
どちらか一つで事足りるのでは?

結論から言うと、両方とも必要なものです。

先ほど書いたとおり、賃金や労働時間や休日などの詳細を事前に決めずに働き始めるケースは少なくありません。
これでは全くの白紙契約状態であって、労使双方にリスクがあります。
でも、この場合であっても、就業規則があれば、そこには労働条件や服務規律が定められていますから、これによりまずは白紙契約を防ぐことができます。
また、同じ会社の中で個々の従業員の労働条件が極端に違うというのも理不尽ですから、統一的な労働条件を定めておくことも必要でしょう。
このような理由から、法律は就業規則を作成することを義務付けているのです。

しかし、例えば就業規則には、「会社は、従業員に毎月○日に賃金を支給する」と明記されてはいますが「誰にいくら支払う」かまでは明記されていません。
なので、このような個別に定めなければならないことは個別に確認し合う必要があります。
その役割を果たすのが、労働条件通知書や労働契約書なのです。

このように、就業規則は、全従業員を対象とした統一的な契約内容であるのに対し、労働条件通知書や労働契約書は個々の従業員との間の個別の契約内容である点に役割の違いがあり、二つともなくてはならないものなのです。

 

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