会社が組織である以上、従業員に対する何らかのルールが必要です。
個々の従業員の労働条件に統一性がないと労務管理がたいへんになるし、働く上で従業員に守ってもらわなければならないことが明確に示されていないと職場秩序の維持はできません。
これを具体的に定め、明文化したものが就業規則。
「職場のルールブック」なんてよく言われます。
「就業規則なんか作ったら会社はそれに縛られる!」という社長の声をたまに聴きます。
でもこれ、逆だと思いますよ。
逆― そう、就業規則はむしろ従業員を縛るためのもの。
「縛る」というと、ちょっと聞こえが悪いですけど、誤解しないでくださいね。
言いたいことは、組織を動かすためにはルールという名の「縛り」が必要だということ。
このルールという名の縛りには、拘束力や強制力が必要です。
じゃないと誰も守りませんから。
そこで、前回説明したことを思い出してください。
就業規則は、合理的な労働条件が定められており、労働者に周知させていた場合には労働契約の内容となる(労働契約法第7条)
これはどういうことを言っているのか。
ものすごく簡単に言うと、「あなたとの労働契約の内容については就業規則を見てくださいね。そこに書いてある通りですから」ということ。
契約とは、簡単に言えば拘束力や強制力を持つ合意のこと。
契約の内容が就業規則に書いてある通りですよということは、つまり、就業規則に書いてあることには拘束力や強制力があるということを言っているわけです。
どうです? やはり就業規則は紙切れなんかじゃないでしょう?
しかし一方で、就業規則が持つ拘束力や強制力は、従業員に対してだけではなく会社に対しても生ずるものでもあります。
その意味から言うと、会社が就業規則によって縛られるというのもあながち間違いとは言えません。
しかし、それでもやはり、就業規則に会社が縛られるなんてことはないと断言します。
なぜなら、就業規則があろうとなかろうと、そもそも会社は労働基準法その他の労働法令に縛られているから。
もう一度言います。
就業規則があろうとなかろうと、そもそも会社は労働基準法その他の労働法令に縛られているのです。
言い方を変えると、会社を縛っているものの正体は就業規則なのではなく労働基準法その他の労働法令なのです。
法治国家である以上、法律に縛られるのは仕方のないこと。
よって、就業規則さえなくなれば会社は縛られなくて済むなんてことにはならないのです。