いまさら聞けない働き方改革の全体像

いまさら聞けない働き方改革の全体像-センテイ社会保険労務士事務所 働き方改革

さて前回は、「働き方改革」を推し進めるうえで、まずは働き方改革関連法を知ることが大切だという話をしました。

厚生労働省は、この改革の実現のために働き方改革の3つの柱を設定しています。

働き方改革の3つの柱
  • 長時間労働の是正
  • 多様で柔軟な働き方の実現
  • 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

この3つの柱は、働き方改革の最重要課題。
そして、この最重要課題の克服の具体策として制定されたのが働き方改革関連法です。

ということで、まずはその全体像を見ていきましょう。

なお、働き方改革関連法の内のいくつかは、大企業と中小企業で施行日が異なります。
ここでいう中小企業とは、次の表のとおり「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者数」のいずれかが表中の基準に該当するものを言います。
また、事業場単位ではなく企業単位であることに留意する必要があります。

業種 資本金の額
または出資の総額
または 常時使用する
労働者
小売業 5,000万円以下 または 50人以下
サービス業 5,000万円以下 または 100人以下
卸売業 1億円以下 または 100人以下
その他
(製造業、建設業、
運輸業、その他)
3億円以下 または 300人以下

働き方改革関連法の全体像

1.時間外労働の上限規制
  • 大企業:2019年4月1日施行
  • 中小企業:2020年4月1日施行
  • これまでは、残業時間の法律上の上限はありませんでしたが、法改正により上限が定められ、これを超す残業ができなくなりました。
2.年次有給休暇の確実な取得
  • 2019年4月1日施行
  • 10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日について確実に取得させることが義務付けられました。
3.中小企業の月60時間超の残業の割増率引き上げ
  • 大企業:適用済
  • 中小企業:2023年4月1日施行
  • 現在、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は、大企業で50%以上、中小企業は25%以上とされていますが、2023年4月から中小企業も50%以上に引き上げられます。
4.労働時間の客観的な把握
  • 2019年4月1日施行
  • これまでは、通達により労働時間の客観的な把握が求められていましたが、裁量労働制の適用者や労基法上の管理監督者は対象外でした。今後はこれらの者を含む全ての労働者を対象として労働時間を客観的に把握するよう義務付けられました。
5.フレックスタイム制の拡充
  • 2019年4月1日施行
  • 労働時間の調整が可能な期間(清算期間)の上限が、これまでの1ヵ月から3ヵ月に延長され、より柔軟でメリハリのついた働き方が可能になりました。
6.高度プロフェッショナル制度の創設
  • 2019年4月1日施行
  • 職務の範囲が明確で一定の年収(1,075万円以上)を有する労働者が、高度の専門知識等を必要とする業務に従事する場合に、本人の同意・労使委員会の決議・健康確保措置を条件として、労働時間・休日・深夜の割増賃金の支払いを適用除外にできるようになりました。
7.勤務間インターバル制度の導入促進
  • 2019年4月1日施行
  • 1日の勤務終了後から翌日の勤務開始までの間に、一定時間以上の休息時間を確保するよう努めなければなりません。(努力義務)
8.産業医・産業保健機能の強化
  • 2019年4月1日施行
  • 事業者から産業医への情報提供を強化するとともに、産業医の活動と衛生委員会との関係が強化されます。また、産業医等による労働者の健康相談を強化するとともに、事業者による労働者の健康情報の適正な取り扱いが推進されます。(産業医の選任と衛生委員会の設置は、50人以上の事業者の義務)
9.同一労働同一賃金
  • 大企業:2020年4月1日施行
  • 中小企業:2021年4月1日施行
  • 同一事業所内において、正規雇用者と非正規雇用者との間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。

中小企業における働き方改革

いかかでしょう?
やらなければならないことがたくさんあって驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。

ただ、中小企業にとっては、「フレックスタイム制」「高度プロフェッショナル制度」「産業医・産業保健機能の強化」の影響は限定的なのではないかと思われます。
また、「勤務間インターバル制度」は今のところ努力義務ですし、「月60時間超の残業の割増率引き上げ」は2023年まで猶予期間があります。

よって、中小企業にとって今すぐ取りかからなくてはならないのは「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇の確実な取得」「労働時間の客観的な把握」そして「同一労働同一賃金」です。(同一労働同一賃金の中小企業の施行は2021年からですが、今から準備をしておく必要があります)

次回からは、この4つについて順次みていくことにします。