信頼関係のみで成り立つ時代なら良かったのですが…
定年まで長期の雇用が確保されていた「終身雇用制度」 年齢を重ねれば賃金が上がっていくことが約束されていた「年功序列制度」
昭和の時代の労使間の問題は、これら雇用と賃金の安定を前提に、職場風土や職場の人間関係によって維持され解決されてきました。
つまり、労使の関係は「信頼関係」によって成り立っており、「契約関係」と捉える意識がとても薄かったといえます。
よって、就業規則を作成する理由はもっぱら「法律で決まっているから」であり、労働基準監督署の勧告や指導を受けたくないが為に作成されてきたのが実情だったと言えます。
そこで多くの会社に用いられたのがモデル就業規則です。
モデル就業規則とは次のようなものを言います。
モデル就業規則はいわば「出来合い」の就業規則です。
これらは無料(またはタダ同然)で手に入りますし、行政機関が配布するものや実務書などに添付されているものであれば法令に則った内容が記載されているのでその点では安心ではあります。
昨今は契約を重視する時代です
しかし今、終身雇用制度や年功序列制度はすでに崩壊しているともいわれています。
非正規雇用が激増し、正社員であっても能力主義や成果主義の名のもとに雇用と賃金の安定は約束されない時代となりました。
このことにいち早く、そして敏感に反応したのは労働者側でした。
これまでは、「長くお世話になる会社なのだし、将来的には安泰だから、少しぐらいのことは我慢して働こう」という気持ちになれました。それが今では、「長く雇ってもらえるわけでもないし、将来のこともわからないのに、我慢する必要はない」というように働く人たち意識が変わってきているのです。
こうした気持ちを後押しするように、インターネット上には労働者の権利と会社側の義務に関する情報があふれています。働く人たちにとって、会社に対して権利を主張し義務の履行を求めることに抵抗がなくなってきているのです。
このような状況下では、従来型の信頼関係のみに基づき維持され解決される労使関係を続けていくことは困難になってきたと言えます。
このように、労働者側は、労使の関係は信頼関係のみによって成立するものではなく、権利と義務の関係によって成り立つということに既に気づいています。
そして、この権利と義務の関係を明確にし、それを約束し合うことこそが労働契約であることを知っていますし、労働契約の内容を明文化したものが就業規則であるということも知っているのです。
ところが多くの会社には旧態依然とした「出来合い」の就業規則しかありません。
前述のとおり、就業規則は、合理的な労働条件が定められており、労働者に周知させていた場合には労働契約の内容となります。つまり、出来合いの内容がそのまま契約内容となってしまうのです。
モデル就業規則をそのまま使っていませんか
モデル就業規則そのものが悪いわけではありません。
しかし、就業規則の内容が労働契約の内容となるわけですから、「出来合い」のモデル就業規則をそのまま使っていいわけはありません。
「出来合い」であるがゆえに、企業規模・企業体力・業種等の自社の実態はもちろん反映されていないので、知らず知らずのうちに自社の実態と掛け離れた労働契約を結んでしまうことになりかねないのです。
実態とかけ離れた労働契約を結んでしまえば、それはトラブルの火種となるでしょう。
これでは、経営者は本業に集中できないでしょうし、従業員は安心して働くことはできないでしょう。
そしてこれにより 業績に悪影響を与える という最悪の結果を招くことになってしまうのです。
繰り返しますが、モデル就業規則そのものが悪いわけではありません。
モデル就業規則は、いわば「たたき台」です。
企業規模・企業体力・業種等の自社の実態を十分に考慮し反映させつつ、このたたき台に適宜手を加えていくことで自社の就業規則に相応しい内容となるよう、その精度を高めていくことが必要なのです。
お気軽にお問い合わせください
センテイ社会保険労務士事務所
〒007-0851 札幌市東区北51条東6丁目5-18
011-711-8638
(平日:9時~18時)